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サブブランドやMVNOへの対応を打ち出した「+メッセージ」の狙い

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は9月2日、各社が提供しているスマートフォン向けのメッセージサービス「+メッセージ」を、携帯3社の全ブランドとその回線を借りているMVNOでも利用できるようにすることを発表しました。「LINE」と比べて知名度も利用者も大きく劣る+メッセージですが、なぜ今のタイミングで利用を拡大する策に打って出たのでしょうか。

「メインブランドのみ」の戦略を一変させた+メッセージ

+メッセージは、2018年よりNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社が提供している、電話番号を通じて利用できるメッセージサービス。「LINE」のようにテキストや画像などによるメッセージのやり取りができるスマートフォン向けのメッセージサービスで、携帯電話会社標準のサービスということもあって2021年7月には利用者が2500万を突破するなど、多くの利用者を抱えているサービスでもあります。

とはいえ、約8800万人もの利用者を抱えているLINEと比べると、その知名度は低いというのが正直なところ。その要因はいくつかあるのですが、最も大きな要因とされているのが、通信サービスによって+メッセージが利用できない場合があることです。

というのも+メッセージは、インターネットの技術ではなくモバイル通信の技術、より具体的にはSMSの後継規格とされる「RCS」(Rich Communication Services)という技術を用いたサービス。それゆえ、LINEのようにアプリをインストールすれば利用できるというわけにはいかず、モバイル通信のネットワーク側の対応も必要になってくるのです。

そしてこれまで、+メッセージに対応している通信サービスは携帯大手3社のメインブランド(NTTドコモの「ahamo」を含む)とKDDIの「povo」のみで、それ以外のサービスでは利用できなかったのです。そこで携帯3社は2021年9月2日、+メッセージに対応する通信サービスを拡大することを発表したのです。

具体的には、KDDIの「UQ mobile」やソフトバンクの「ワイモバイル」「LINEMO」、そして3社からネットワークを借りているMVNOでも、今後+メッセージが利用できるようになるとのことです。対応する時期にはサービスによって差があるようですが、一連の施策がサービス利用拡大を後押しするためのものであることは確かでしょう。

サブブランドやMVNOへの対応を打ち出した「+メッセージ」の狙い

ですが、これまでの+メッセージに関する発表会を振り返ると、MVNOからの利用については「MVNO側から要望があれば対応する」と説明するにとどまるなど、携帯3社は+メッセージの対象サービス拡大に決して前向きとはいえない姿勢を見せていました。それがなぜ、一転して対象サービスを増やし利用拡大へと舵を切ったのでしょうか。

LINEに対抗する狙いは「行政サービスのデジタル化」

そこには、行政サービスのデジタル化需要を獲得したい狙いが大きいのではないかと筆者は見ています。コロナ禍で行政のデジタル化対応の遅れが多数指摘されたことで、日本政府は2021年9月にデジタル庁を発足させるなど、行政サービスのデジタル化に向けた取り組みを急いでいます。

そして、デジタル化された行政サービスの窓口としてはスマートフォンが有望とされていますが、現在その需要を一手に獲得しているのが、日本のスマートフォンユーザーの大半が利用しているLINEです。実際LINEはここ最近、新型コロナウイルスのワクチン接種の予約などさまざまな行政サービスに活用されていますし、LINE側も行政サービスの需要獲得に力を入れています。

ですが一方で、LINEを巡っては2021年3月、日本国内のユーザーのデータが中国で閲覧できる状態になっていたり、一部のデータを韓国で管理していたことを明確に説明していなかったりするなど、情報管理に関する多くの問題が指摘されて大きな騒動となりました。

もちろんLINE側も、一連の問題を受けて日本の利用者のデータを国内のサーバーに移すなどの措置を取ってはいるのですが、このことはLINEだけに行政サービスが依存してしまうことの問題点やリスクを示したといえます。それゆえ、LINEの代替となるサービスの登場が期待されており、そこで有望視されているのが+メッセージなのです。

というのも、+メッセージは国内の携帯3社が運営しているという安心感がありますし、電話番号を通じてやり取りができるので、若い世代だけでなくシニアなどにも利用してもらいやすいメリットがあります。行政サービスの提供という点では非常に大きなポテンシャルを持つだけに、対象サービスの拡大で課題となっている利用者数を増やすことにより、行政側にLINEの代替として使ってもらうことを狙っているのではないかと考えられるわけです。

それゆえ、+メッセージは一連の施策により、LINEから日常のコミュニケーション需要を奪うのではなく、行政手続きなどで必要な時に利用してもらうサービスを目指していくのではないかと考えられます。ですが、+メッセージは携帯3社それぞれが提供しているという構造上、LINEの代替となるにはまだ少なからぬ課題を抱えているのも事実です。

その1つは、楽天モバイルが+メッセージに対応していないことです。楽天モバイルは+メッセージと同じRCSの技術を用い、独自のコミュニケーションサービス「Rakuten Link」を展開していることから、+メッセージへの対応は難しいと考えられます。楽天モバイルの利用者が増えるにつれ、この点は大きな課題になってくるといえそうです。

そしてもう1つは、2021年3月にLINEとZホールディングスと経営統合したことで、ソフトバンクがLINEの実質的な親会社となったことです。ソフトバンクはLINEと、その競合となる+メッセージを持つという矛盾した立場になってしまったことから、同社が今後どこまで+メッセージに力を入れるのかは不透明です。実際、NTTドコモとKDDIが+メッセージのサブブランドやMVNOへの対応を2021年9月中に実施するとしたものの、NTTドコモは準備に時間がかかるとしてMVNO向け提供時期の延期を発表。さらに、ソフトバンクがLINEMOやワイモバイルなどへの対応をするのは2022年春とかなり先になるなど、キャリア間で温度差があるように見えます。

そうしたことから、+メッセージが行政から信頼を獲得するにあたっては、楽天モバイルも含めた携帯4社間の立場の違いをいかに吸収し、連携を取ることができるかが極めて重要になってくるといえそうです。

福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

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