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中国のウイグル族弾圧を「ジェノサイド」と認定=英民衆法廷

ジョエル・ガンター、BBCニュース

イギリスの独立民衆法廷「ウイグル法廷」は9日、中国が新疆ウイグル自治区のイスラム系少数民族ウイグル族にジェノサイド(集団虐殺)を行っていたと認定したと発表した。中国政府がウイグル族に避妊や不妊手術を強制していたとされることが、この結論に達した大きな理由だと述べている。

この法廷を主導した弁護士のサー・ジョフリー・ナイスは、同法廷の専門家パネルは、中国が「計画的、組織的、統一的な政策」として「長期的にウイグル族などの少数民族の人口削減」を行っていたとの見解に至ったと説明。新疆地区のイスラム系少数民族への虐待について、習近平国家主席をはじめとする政府の指導層が「直接的な責任」を負っているとの考えを示した。

「ウイグル法廷」の専門家パネルは、法律家や学者で構成されている。同法廷の判決には法的拘束力や国の指導者らに対する強制力はない。しかし法廷側は、中国の疑惑に対する大量の証拠を提示し、ジェノサイドへの疑問に独立した結論を導くのが目的だとした。

中国政府は、新疆地区での人権侵害疑惑をすべて否定している。ウイグル法廷の結論を受けて政府報道官は、この団体は「偽物の法廷」であり、「数少ない反中勢力が公衆を欺き、ミスリードするための政治の道具」になっていると述べた。

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判決文を読み上げたサー・ジョフリーは、新疆地区で「集団殺害があった証拠はない」と述べた半面、疑惑の人口抑制政策にはジェノサイドと同等の意図があると指摘。また、ウイグル族に対してなされた人道に対する罪や拷問、性暴力の証拠を発見したと報告した。

英議会の「中国に関する超党派同盟」のイアン・ダンカン・スミス共同会長(保守党)はこの報告を受け、今こそイギリス政府は中国のジェノサイドを批判するべきだとBBCに語った。

「イギリス政府は、適格な法廷が証拠を評価すべきだと話していた。これ以上に適格な報告書はないだろう」

「政府は今こそ、手をこまねくのをやめるべきだ。新疆地区で起きているジェノサイドを柱に、中国との関係を考えるべきだ」

保守党のナス・ガニ下院議員は、ウイグル法廷の結論は「革新的なものだ」と語った。

「この法廷は最高水準の司法で構成されている。きょう公表された証拠はジェノサイドの意図があったというもっともな疑問に対して十分なものだ」

「特に懸念されるのは、このジェノサイドが女性を標的にし、出産を妨害している点だ」

中国政府はかねて、ウイグル族などイスラム系少数民族が多く住む北西部・新疆地域で、人道に対する罪とジェノサイドを行っていると非難されている。

専門家によると、少なくとも100万人のウイグル族やムスリムが拘束され、超法規的な強制収容所や刑務所に入れられている。新疆地区の住民やかつて収監されていた人々の証言からは、拷問や強制不妊、性暴力の疑惑が持ち上がっている。

ウイグル法廷は今年6月と9月にロンドンで証人尋問をし、元囚人や専門家など70人以上が証言した。

中国のウイグル族弾圧を「ジェノサイド」と認定=英民衆法廷

ウイグルの言語学者アブドゥウェリ・アユップ氏は、新疆地区に住む家族への嫌がらせがあったと証言。また、アユップ氏自身もテロ容疑をかけられ、欠席裁判で15カ月の有罪判決を受けたと述べた。中国政府はウイグル族にテロ容疑をかけることが多いという。

アユップ氏はBBCの取材に対し、同法廷でジェノサイドの結論が出たことに「非常に勇気づけられた」と話した。

「私は中国政府に有罪を言い渡されているが、この判決をきっかけに、誰かが中国政府に有罪を言い渡してほしい。たくさんのウイグル族が、ウイグル族だというだけで刑務所へ送られている。今こそ、抑圧している側に判決が下るときだ」

中国が実行しているとされる弾圧がジェノサイドに相当するのかは、国際的にも意見が分かれている。アメリカ政府は、中国がウイグル族にジェノサイドを働いていると非難。イギリスやカナダ、オランダ、リトアニアの各議会も、同様の決議を可決している。

しかしイギリス政府は、中国をジェノサイドで非難することを拒否している。ボリス・ジョンソン首相は、ジェノサイドは司法権力を伴う単語で、その使用は刑事裁判所だけが決定すべきだと述べている。

ウイグル法廷は今回、中国政府がウイグル族の文化を抹消し、強制移住や避妊プログラムを通じて、ウイグル族の人口を減らそうとしているという報告を元に、ジェノサイドを認定した。

米人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは今年4月にまとめた報告で、中国政府が新疆地区で人道に対する罪を犯していると結論付けたものの、ジェノサイドの認定には至らなかった。

アムネスティ・インターナショナルも独自の報告書で、同じ結論に達している。

ウイグル族にとって「歴史的な日」

ウイグル法廷は、世界的なウイグル人組織「世界ウイグル会議」の要請を受けてサー・ジョフリーが立ち上げた。世界ウイグル会議のドルクン・イサ会長はBBCの取材で、ウイグル法廷の判決によって、この日がウイグル族にとって「歴史的な日」になったと述べた。

「これで国際社会がウイグル族のジェノサイドを黙殺することはできなくなった。1948年のジェノサイド条約(集団殺害罪の防止および処罰に関する条約)に署名したすべての国に、法的措置を取る法的な責務が生じた」

サー・ジョフリーは判決読み上げに際し、この法廷が立ち上げられたのは、新疆地区での虐待疑惑を調査する国際的な刑事裁判所がなかったからだと述べた。

国際刑事裁判所(ICC)は昨年12月、加盟国ではない中国を裁くことはできないとして、この件の調査は行わないと発表している。

また、国際司法裁判所(ICJ)は国連安全保障理事会(安保理)で承認された案件だけを審理にかけることができる。安保理では中国が拒否権を持っている。

「どこかの国の、あるいは国際的な団体が1つでもこの問題について考えたり、考えようとしたりしていれば、ウイグル法廷は必要なかっただろう」とサー・ジョフリーは述べた。

中国の人権問題をめぐっては、アメリカやイギリス、カナダ政府が2022年の冬季北京五輪を外交ボイコットすると発表したばかり。

ジョンソン英首相は8日、アメリカやカナダと同様、選手の派遣を取りやめることは考えていないと述べている。

(英語記事 Uyghur Tribunal accuses China of genocide)

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