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「最後」撤回も納得 Windows 11は次世代へのスタート地点(本田雅一)

2015年以来のメジャーアップデートとなるWindows 11がついに発表された。Windows 10は「最後のWindows」としてアナウンスされていたが、自らの宣言を破って名前を変えたことになる。

ユーザーインターフェイスの洗練、画面デザインのディテールへのこだわり、Microsoft Storeの刷新、Amazon アプリストアを通じたAndroidアプリの提供などに加え、セキュリティ対策、バッテリ消費の最小化、Windows Helloの応答性向上など、様々な面でチューンナップが行われているようだ。

ただし、Windows 11自身がWindows 10の最新大型アップデートとして開発されていたことからわかるように、その技術的な基礎および背骨となる部分はWindows 10を引き継いでいるのだろう。

だが「11は10の焼き直しにしか過ぎない。お化粧直しだ」とは思わない。OS基盤としてどのようなものであるかを傍にいくならば、エンドユーザーから見てWindows 11はメジャーアップデートと言えるだけの違いを作っていると思うからだ。早速4つの視点で見ていこう。

視点1:長所をさらに引き出すためのUIチェンジ

Windows 8時代に追加されたタッチパネル操作向けのユーザーインターフェイスとWinRTは、当初はユーザーインターフェイスが二つに分断されたほか、辻褄の合わない部分も散見された。しかし、Microsoftは根気良く伝統的なデスクトップとタッチ操作を馴染ませる改良を続けてきた。

8.1、10そして10に対するアップデートを通じての作業では、Windows 95以来洗練させてきた操作フィールを大切にしながらも、Win32/Win64アプリとWinRT以降のアプリの共存に違和感を覚えることがなくなってきている。

Windows 11の新しいユーザーインターフェイスは伝統的なパソコンの操作性、機能性を備えつつ、タッチ操作も可能という、Windows 8時代に足枷となっていた操作性を洗練させ、今やWindowsのユニークな特長と言えるまでになった。

もちろん、まだ仕上がっているわけではなく、使い込んでもいないが、センターに寄せられたWindowsボタンから始める操作は伝統のStartボタンのイメージを踏襲しつつ、スマートフォンからデジタルデバイスを使い始めた世代のユーザーにも接しやすいフィールに仕上げることを目標にしているように思える。

Windows Phoneの残り香とも言えるライブタイルはなくなったが、ウィジェットパネルの方が使い勝手や発展性の面でもプラスになるだろう。

このユーザーインターフェイスは開発が中止になったWindows 10Xとよく似ていることから、もともとWindows10を基礎に幅広いデバイスに適応範囲を広げるために開発されていたものと考えられる。

Windows Vista以来の基礎工事になると思われたWindows 10Xは放棄されたが、その上で開発されたいくつかの成果がWindows 11に反映された結果、ユーザーインタフェイスが変化したのだろう。

Microsoft Teamsとの統合はやや手前味噌な気もするが(他社ツールもプラグインで対応するのかもしれない)、オンラインミーティングやチャットが当たり前になった時代を考えれば歓迎される機能追加だ。

見た目やアニメーションの雰囲気は好みもあるが、デスクトップ操作もタッチ操作も馴染むWindows 10の良さを発展させたものに見える。

視点2:モバイル環境への歩み寄り

デスクトップ操作に慣れたユーザーにも配慮しつつ、スマートフォンユーザーにさらに歩み寄ったも馴染みやすいユーザーインターフェイスとなったことに加え、機能面でもスマートフォンとの連携を深めている。

AppleがMacとiPhone、iPadの親和性を高めるため、それぞれのOSに仕掛けを入れているのに対し、MicrosoftはWindowsに仕掛けを入れられるが、スマートフォンのOSに仕掛けを組み込めない。iOSとAndroidでは取り組める範囲も異なるが、例えばOneDriveを介して文書や各種メディアファイルを交換しやすいよう、相互で開いたファイルの履歴を参照できるようにするなど、実際の利用シーンに合わせた作り込みがなされている。

それぞれにどこまでの使い勝手や機能を提供できるか、今後も様々なアイディアが盛り込まれていくのだろうが、まさに“歩み寄る“という表現がぴったりな形での連携になっていると思う。

かつて取り組みが行われていた"Windows 10でAndroidアプリを動かすプロジェクト"も組み込まれた。こちらもアプリマーケットプレイスを自社で運用するといった欲を出すのではなく、Amazon アプリストアを使う仕組み。Microsoft自身の支配力が及ばないところでパワープレイをするのではなく、アプリマーケットプレイスをAmazonに任せているところに実質的な使い勝手を優先させた歩み寄りを感じた。


 「最後」撤回も納得 Windows 11は次世代へのスタート地点(本田雅一)

なお、Androidのアプリにはx86バイナリが含まれるものもあるが、Windows 11はいずれのアプリも実行できる。(x86バイナリがある方がパフォーマンスは当然、良くなる)

現実にはIntelチップを使ったAndroid機は新製品に存在しておらず、ほとんどがx86バイナリを持っていないが、Windows 11の登場で再びx86バイナリを含むアプリが増えるかもしれない。

視点3:Xbox技術の導入

ゲーミングPCプラットフォームとしてWindowsは重要な役割を果たしている。この強みを生かすため、MicrosoftはXbox Series X / Xbox Series Sで導入した技術をWindows 11に導入し、最新のDirectX 12 Ultimateも盛り込んでいる。

PCとXboxの類似性は、これまで類似性を活かしたクロスプラットフォームの開発環境に良い影響を与えてきたが、この関係性がさらに強まるはずだ。

ゲーム関連ではDirectX 12 Ultimateが導入されるほか、Xbox Series X / Xbox Series SのオートHDR機能や、ローディングを高速化するDirectStorage機能などの採用が明らかになっている。今後もアップデートで、両プラットフォームを二人三脚の形で機能強化していくのではないだろうか。

DirectX 12 Ultimateはレイトレーシング機能の向上など、画質向上もトピックだが、描画品質を動的に調整することでフレームレートを維持するVariable Rate Shading(VRS)もあり、ハードウェアのパフォーマンス分布幅が広いPCでは使いやすい面もある。

同じように多様な環境で最良の結果を得られるという意味で、従来ゲームのHDR表示が可能なオートHDRは歓迎される機能向上になるはずだ。

視点4:Windows 10の良さを引き継いだ上でスタート地点をリセット

現代のOSはサポートする機能が多岐にわたっているため、Windows 11発表イベントだけでWindows 11の全てが見えるわけではない。

言葉の上での様々なパフォーマンス向上は、その実装方法やきちんと機能しているかどうかを検証してみなければ正確なところは理解できない。また、新しいデバイスや技術トレンドに合わせ、細かく、或いは大きくドライバモデルが更新されることもあり、デベロッパー向けの情報を辿れば、もっと多くのことが見えてくるだろう。

発表会を振り返ってみてWindows 11は、Windows 10が2015年から長い期間をかけて積み上げてきた要素、組み込もうと開発しながら組み込みを断念した要素(Android互換機能や10XのUIなど)を盛り込み、その間に進化した最新のPCプラットフォームに適応するよう、新たに改良を積み上げていくスタート地点を設定し直したものとも言えるのではないだろうか。

“最後だったはずのWindows 10は最後ではなかった“というのは、確かに名前の上ではそうだが、長年の開発で成熟したWindows 10をさらに洗練していくために、Windows 10を組み立て直し、これからの数年の基礎とする。そのためにはある程度、想定するハードウェア環境も限定せねばならない。

発表された内容をみると、Windows 11の動作要件として、

というスペックが並ぶが、手元にあるノートPCでインストールの可否をチェックしても“インストール可能“とは判別されなかった。

ある程度、新しいスペックのPC環境が必要ということなのだろうが、チェックツールがインストールできないと判断している理由が表示されないため、まだ動作環境の細かな部分についてはチェックできていない。

ともあれ、6年が経過しようとしているWindows 10だっただけに、今回のようなリフレッシュは必要だったのだと思う。

OSの核となる部分は10のまま、体験を11にアップグレード

さて、最後に。前回のコラムでWindows NT以降のカーネル(OSの核となる部分)のバージョンについて書いたが、Windows 11の場合、現時点でこの値は10.0になっているようだ。もちろん、正式リリースまでに変更が加わる可能性もあるが、元々、Windows 11がWindows 10の定期大型アップデートとして開発されていたことやWindows 10X向けに開発していた新しいカーネルがお蔵入りになったのだからまったく不思議ではない。

カーネルは変わっていないが、コンシューマ向けのOSはユーザー体験の質こそが最も重要。そんな考えに基づいて”11”と名付けたのかもしれない。それはマーケティング的な観点からも正解だ。

一方で技術的にはWindows 10を引き継いでいるわけで、”Windows 10は最後のWindows”という宣言を破ったわけではないという見方もあるだろう。

NTを刷新するはずだったWhistlerがいつの間にか、Windows 2000のお化粧直しであるWinodws XPになった歴史を思い起こさせるが、基礎部分が引き継がれていることは安心にもつながるのではないだろうか。

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